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浅田真央 真向勝負という戦い方 ジャパンオープン2015

現役復帰の初戦からソチ五輪と同じ演技構成で勝負

1年間の休養を経て、現役復帰した浅田真央選手。ジャパンオープンでの結果は、ジャンプにいくつかミスがでたものの、

フリースケーティング141.70という自己ベストに迫る高得点を獲得。

彼女自身が言っていた通り、ソチ後の世界選手権で優勝したレベルに、復帰初戦から戻してきた形となりました。

初戦から、ここまで状態がいいのも、浅田選手としては、かなり珍しいこと。

1年間の休養を取り、フィギュアスケート以外のさまざまな経験をしたことが、彼女にとってよほど良い経験となり糧となったということなのでしょう。スケートの技術だけでなく、人間として女性として経験が深まったことが、演技内容にも反映されているように感じました。

フィギュアスケートのシーズンは、10月のグランプリシリーズから本格的に開始されますが、ここで、主な大会のスケジュールを確認したいと思います。

グランプリシリーズ10月から12月

グランプリファイナル12月上旬

各国国内選手権12月から1月

欧州選手権 1月下旬

四大陸選手権2月上旬

世界選手権 3月下旬

このように、重要な大会が半年の間にびっしりと詰まっており、かなりキツイスケジュールと言えます。

よって、シーズンの前半に行われるグランプリシリーズやファイナルに、さほど重きを置かない戦略をとる選手もいるくらいです。

大切なのは、国内選手権で上位に立ち、シーズン最後の世界選手権に派遣されることなのです。

今回行われたジャパンオープンは、公式戦でもなく、ファンにとっては楽しみな大会でも、選手の戦略として考えればおまけのような大会。

シーズン前に、フリースケーティングの仕上がりを確かめ、ジャッジの印象を確認するためのような大会と言っていいでしょう。

それゆえ、選手たちも、世界選手権に出場するような高いモチベーションでは挑んできていません。

パトリック・チャン選手がジャパンオープンでは、毎回低い点数をだしているのがその例と言えます。

浅田真央選手の現役復帰戦であるということで、いつもと違う注目度があったジャパンオープン

浅田選手の復帰は、観客の注目度も高いですが、選手の中でも、「どのくらいの感じで戻ってくるのだろう」という予測をそれぞれ持っていたものと思われます。

若手選手たち、ゴールド、トゥクタミシェワ、ソトニコワは、浅田選手を尊敬はしていても、彼女が1年間休養していたことにより、もはや自分たちの時代であると確信していたに違いありません。

実際に、実力者ぞろいで、浅田選手もウカウカしていられない存在ばかりなのは確かです。

ここで、シーズンを通して戦う上の戦略という話が出てきます。

シーズン初戦の公式戦でもない大会で、どのくらいのモチベーションの高さで挑むのか、考える選手もいることと思われます。

世界女王トゥクタミシェワ選手も、「絶対にやってやる」という感覚では臨んでいないように感じました。

しかし、浅田真央選手にとっての戦略は、ブレることなくいつも真向勝負。

どんな大会でも、どんな状況でも、今自分のできることすべてをさらけ出して挑んできます。

その戦略が、賢いのかといえば、そうじゃないという人もいるでしょう。

実際、若手スケーターたちは、それぞれの浅田真央の戻り具合の予想に差があったとしても、あそこまでの高みのレベルで戻ってくるとは思っていなかったと思うのです。

余裕をもっていた彼女たちに、141.70という得点を見せつけ、「できばえ的には55点です」と言い放った浅田選手。

侮れないライバルたちに、「やばい」と思わせてしまいました。

彼女たちは、国にもどり、必死に練習し、「真央には負けない」と挑んでくることになります。

浅田選手は、自分でライバルを成長させてしまったことになるのです。

そこそこの仕上がり具合をお披露目し、「こんなもんか」と思わせておく戦法もあるでしょう。

しかし、そんな戦法は、浅田選手にとっても思いもつかないもの。

正々堂々と真っ向勝負。それしかないのです。

自分のできることを追求し、つねに最高のレベルに挑み続ける。

この彼女特有の戦い方が、人を感動させ動かしてゆくのでしょう。

アデリーナ・ソトニコワ選手は、同じく休養とケガから復帰し、モチベーションの維持に悩んでいたと思います。

浅田選手の演技を、今回目の前で見ることとなったソトニコワ選手。

浅田選手の演技が終わったあとに、ハグをしに駆けつけていましたが、どんな心境だったのでしょうか。

彼女の闘争心に火が付いたのではないかと信じたいです。

そして、この真っ向勝負という戦い方は、日本の後輩選手たちにキチンと引き継がれていました。

宇野昌磨選手は、シニア初挑戦のシーズンで、パーソナルベストスコア歴代5位に相当する高得点を獲得し、シニア男子に宣戦布告。

四回転2回転の連続ジャンプを演技後半に成功させ、パトリック・チャン選手の度肝を抜いた形となりました。

宮原知子選手は、自己ベストを更新する134.67を獲得し、浅田選手には負けるつもりはないという覚悟を見せました。

小さな体にシャイな性格の彼女のどこに、そんな闘争心があるのでしょうか。浅田真央のライバルとして、もっとももっと世界に名を轟かせてほしいものです。

今回のジャパンオープンは、浅田真央の復帰が導火線となり、シーズンの本格始動に向けて、思わぬ火花を生んだ活気ある大会となりました。

シーズンの本格始動がますます楽しみです。