フィギュアスケートを楽しく観たいから

スポーツナビ+から引っ越してきました。

浅田真央選手は進化している 追いつかなければならないのは世界の方だ

前回書いた記事「浅田真央選手へ 自分のためにスケートを追求してください」は、思わぬ反響を頂きました。自分としては、NHK杯を見ていて感じたことを書いただけなのですが、

同じように感じていた方が、こんなにも多くいらっしゃるということに驚きました。

イチフィギュアスケートファンとして、あの記事を書いたのですが、浅田真央選手本人は、ファンを常に大切にしているということは承知しています。

全日本選手権でも、ファンの応援が力になりましたと言ってくれていたので、

ファンの応援が浅田選手の力となるのであれば、変わらぬ気持ちで、応援し続けていきたいと思っています。

全日本では、「GO MAO」のバナーを掲げている人も多くいて、浅田選手を応援したいという気持ちが伝わってきて感動しました。

スポーツナビフィギュアスケートブログでも、多くの方が、全日本やファィナルの事を分析されていて、なるほどと読ませていただいたり、

わたしもそう思いますと思ったり、フィギュアスケートファンの愛情を感じてやっぱりフィギュアスケートっていいなと思ったりしていました。

本当は、そんなふうに、ひそかに応援し続けていたかったのですが、NHK杯以降の浅田真央選手に対するメディアの報道が、

あまりにもヒドイと感じていて、どうにも我慢ならなくなってしまい今回書かせて頂きます。

なぜ浅田真央選手に対して、あのようにマイナス思考な報道をするのでしょうか?

NHK杯以降の見出しで多かったのは、「復活なるか」、とか「世界は進化している。追いつけるか」とかが主流ですが、

まず、ファイナルに出場できた時点で復活しています。

グランプリシリーズは、出場する大会のメンバーによって厳しい戦いになったり、ラッキーだったりするので、グランプリファイナルは、

実力があるからといって、必ずしも出場できるとは限らない大会です。

実際に、現世界女王エリザベータ・トゥクタミシェワ選手は、フランスのテロの影響もありますが、出場できませんでした。

その厳しい戦いを、中国杯優勝、NHK杯3位と勝ち抜いてきたのですから、「復活した」といって何か問題があるでしょうか?

そして、疑問なのですが、メディアの中では、なぜ、浅田真央選手だけいつも優勝しないといけないのですか?

人気のある浅田選手ですから、多くの人が優勝してほしいと思っているのかもしれません。

優勝して喜んでいる姿を放送して、視聴率を上げたいと思っているのかもしれません。

しかし、浅田真央選手は、神様ではありません。一流のアスリートではありますが、一人の25歳の女性です。

体調の悪い時もあれば、調子の良しあしの波もあるでしょう。

「いつも優勝する浅田真央」というメディアが作り上げた虚像を多用するのは、もうやめてもらえないでしょうか?

前記事にも書きましたが、失敗しても挑戦する姿というのが、世界中のフィギュアスケートファンを惹きつける浅田真央の魅力のひとつなのです。

6位になろうが何位になろうが、等身大の浅田選手を応援しているのです。

そもそも、イチフィギュアスケートファンである自分が、このブログをソチオリンピックの時に立ち上げたのは、

バンクーバーオリンピックの時にメディアが流し続けた、キム・ヨナ選手と浅田選手のライバル争いの偏向報道に、これ以上惑わされないようにするためでした。

あれには、本当に振り回されました。ヨナ選手や、浅田選手のアンチを作り上げたのは、報道の責任が大きいです。

スケーターの本当の情報を、ファン目線からでもいいから発信しないと、メディアの誤情報ばかり鵜呑みにされてしまうという危機感があったからです。

荒川静香さんが以前こう言っていました。「メディアは、活躍してもアイドル顔の選手しか取材しない。」

まさにおっしゃる通りで、荒川さんや村主章枝さんが活躍した時代は、まったくと言っていいほど、報道されていませんでした。

フィギュアスケートが、現在の人気を得たのは、安藤美姫さんと浅田真央選手の出現で、メディアが二人をアイドル扱いしたことが大きいと言えます。

メディアで紹介してもらって、競技の人気が出るのはいいのですが、選手の成績に影響するほど、メディアの報道が過熱することは、もう少し控えてほしいと思うのです。

トリノオリンピックの時の、安藤美姫さんは、アスリートではなく、アイドル扱いされた為、衣装や髪形などアイドル的な要素ばかり報道され、

女子史上初めてオリンピックで4回転サルコウに挑戦したことなど、一般的にはなかったことのようになっているのです。

トリノオリンピックの時の、メディアの安藤さんに対する体制は、アスリートとしての彼女に悪影響を与えてきたと思っています。

その後も、浅田選手と、アイドル顔の村上佳菜子選手ばかりとりあげ、実力者の鈴木明子さんについて何も取り上げないマスコミに

フィギュアスケートファンは、憤りを感じてきました。

浅田真央選手が、シニアデビューしてから10年になります。

もうそろそろ、メディアとしても事実を報道して、虚像を作り上げることを辞めてもらいたいのですが。

もう十分浅田選手は、メディアにも貢献したではありませんか?

そして、最後に、ここで事実をお伝えします。

「世界は進化している、浅田真央は追いつけるか?」などと一部メディアで言われていますが、

ソチオリンピック以降、進化している選手は、浅田真央選手とエリザベータ・トゥクタミシェワ選手です。

分かりやすくお伝えするために、女子のショートプログラムで考えたいと思います。

以前も書いたのですが、バンクーバーオリンピックの時点で、キム・ヨナ選手が作り上げた、

ショートプログラムで3回転3回転を入れ、GOEで点数を稼ぐという戦い方があります。

そのヨナ選手にしかできなかった戦い方は、4年後のソチオリンピックの時点で、多くの選手が取り入れ、成功させてきました。

ソチの第4、第5グループでショートプログラムに3回転3回転を入れていなかったのは、浅田真央選手とイタリアのマルケイ選手だけでした。

浅田真央選手とトリプルアクセル

現在では、ご存じのとおり、女子のショートプログラムは、だれもが、当然のように3回転3回転を入れています。

よって、今現在、ショートプログラムに3回転3回転を入れることは、一般的には、進化しているとは言えません。

2015グランプリファィナルで優勝したロシアの、エフゲニア・メドベデワ選手は、3F+3T、2A、3Lo の構成なので、

特にソチ以降進化した構成とは言えないでしょう。

ジャンプをすべて後半で飛んでいてスゴイですが、ジュニアには、そういう選手がたくさんいるので、進化というと語弊があります。

だれもが、3回転3回転を跳べる時代になり、スゴイ選手ばかりでフィギュアスケートファンとしては嬉しい時代です。

そんな中、ただひとりショートプログラムトリプルアクセルを入れるという、世界の主流とは違う戦い方を続けてきた選手がいます。

それが、浅田真央選手です。

一年休養して復帰したシーズンに挑戦してくるショートの内容が、3A 3F+3Lo 3Lz なのです。

私はバンクーバー以降、この構成をずっと待っていました。しかし、トリプルルッツの問題があるので、不可能かなとも考えていました。

しかし、休養明けのシーズンでこの構成に挑戦することを知り、本当に驚きました。

このずば抜けて難しい構成を組んで挑戦することを、進化と言わずなんというのでしょうか?

ちなみに、この構成は、4回転時代に入る前の男子のショートプログラムと同じ構成です。

成功すれば、女子で初めての80点越えは間違いないでしょう。

バンクーバーから6年立ちますが、ショートにトリプルアクセルを入れられるのは、浅田選手とトゥクタミシェワ選手だけです。

浅田選手の場合、さらに、3回転2回転から、3回転3回転にグレードアップしていて、しかもセカンドジャンプはループです。

そして、苦手とされてきたジャンプ3Lzをショートプログラムにいれているのです。

何度でも言いますが、この構成が現在のところ、女子のショートプログラムで最高難度の構成です。

4回転をショートに入れられる女子選手が出ない限り最高難度であり続けます。

トゥクタミシェワ選手がトリプルアクセルに成功した時は、3T+3Tだったので、浅田選手の構成の方が難しいと言えます。

しかし、トゥクタミシェワ選手も高難度の3回転3回転を跳べる選手なので、今後、グレードアップした上、

トリプルアクセルを成功させる可能性があります。

よって、ソチ以降、進化したと言える選手は、最高難度に挑戦し、成功させる可能性のある浅田真央選手と、トゥクタミシェワ選手

ということになります。

間違って欲しくないのは、私は浅田真央選手だけがスゴイと言っているわけではありません。

全日本のショートで、構成を変えたことは、正直どうだったのかな?とも思っています。

彼女のメンタル面でどんなことが起こっているのかは、休養して復帰したことのあるアスリートにしか分からないことです。

そういったことを掘り下げて伝えてくれるような記事を求めています。

ただ、加熱な報道を辞めて、等身大の選手の情報をきちんと伝えてくれるメディアが少ないのであれば、

わたしたち、フィギュアスケートファンが、情報を発信していくしかないのかなと、今は思っています。